骨粗鬆症とは、骨の内部の構造が変化して骨の量が減少し、全身の骨が弱くなっていく病気のことです。
社会の高齢化によって骨粗鬆症の人が増えていて、70歳代の女性の約半数が骨粗鬆症といわれています。
骨粗鬆症は加齢に伴って起こることが多いもので、国内の骨粗鬆症の患者数は約1100万人と推計されています。
骨粗鬆症は、一般に男女ともに50歳代から起こりやすくなりますが、男性よりも女性に多い病いです。
骨粗鬆症で骨が弱くなると、骨折が起こりやすくなります。
骨粗鬆症の患者さんが、転倒などにより大腿骨頚部(歩行や起立の要となる太ももの付け根)を骨折すると、それが原因で寝たきりになってしまうことがよくあります。
骨粗鬆症は、寝たきりになった原因として、脳血管障害に続いて2位に入っているほどです。
日本骨粗鬆症学会の取りまとめにより発表されている『骨粗鬆症の予防と治療についてのガイドライン』でも早めに治療を開始する事が勧められているように、骨折や寝たきりの予防のためにも、骨粗鬆症が疑われる場合は、早めに受診をすることが大切です。
骨は主に古くなった部分に「破骨細胞」が集まり骨を破壊し、破壊した部分に「骨芽細胞」が集まり、新しい骨を作ることを繰り返し、絶えずつくり替えられています。
これを「骨代謝」といいます。
骨の健康は、骨代謝がバランスよく繰り返されることで保たれていて、およそ2?3年間で体中の骨がすべてつくり替えられるといわれています。
加齢などによって骨代謝のバランスが崩れ、破壊が再生を上回るようになると骨がもろくなる骨粗鬆症が起こりやすくなります。
健康な骨の内部は、数多くの小さな骨が縦横に連なっていて、スポンジ状の構造になっています。
骨粗鬆症の骨は、小さな骨が細くなって切れ、構造が粗くなり、骨の強度が低下します。
骨粗鬆症の初期には、自覚症状が殆どありません。
骨粗鬆症が進行し、骨の強度が低下すると、圧迫骨折が起こり、背骨がつぶれる事があります。
そうすると、身長が縮む、背中や腰が曲がる、背中や腰が痛むなどの症状が起こってきます。
全身の骨が弱くなって、重いものを持ち上げただけでも背骨の一部が骨折してしまったり、通常なら骨折しなような軽い力が加わっただけでも骨折することがあります。
骨が弱くなることは、すなわち骨量が減るということです。
女性の場合、20歳?40歳くらいまでは、骨代謝のバランスがほぼ保たれていますが、50歳前後の閉経のころから、女性ホルモンの分泌低下に伴い骨量が減少してきます。
女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」には、骨代謝のバランスを調整する重要な役割があるのです。
女性が50歳以上になると骨粗鬆症を起こしやすくなるのは、女性ホルモンの分泌の低下と関係があるようです。
骨粗鬆症の検査には、「骨量の測定」「エックス線検査」「骨代謝マーカー」の3つがあります。
骨量(骨密度)の測定は、手やかかとなどの骨にエックス線や超音波を照射し、骨量を測定します。
背骨の圧迫骨折の有無を調べるためには、エックス線写真を撮影するエックス線検査を行います。
骨が破壊される過程や作られる過程で、尿や血液に様々な成分が放出されることを骨代謝マーカーといいます。
骨代謝のバランスを調べるために、尿検査や血液検査をして骨代謝マーカーの値を測定します。
なお、甲状腺の病気や関節リウマチ、肝臓の病気などでも、骨粗鬆症が起こったり、骨粗鬆症と同じ様な症状が起こることもあるので、それらの病気の有無も調べます。
また、悪性の腫瘍が骨に転移して骨量が低下したり、腰の痛みなどは、骨粗鬆症のほかに、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などでも起こることがあるので、骨粗鬆症の診断に際しては、これまでの病歴に確認や診察が行なわれたり、必要に応じて鑑別のために、尿検査や血液検査が行われることもあります。
骨量の測定方法は、「MD法」「超音波法」「pQCT法」「DXA(デキサ)法」の4つがあります。
MD法は、台の上に両手を置いて、エックス線撮影をするだけの簡単な検査法で、骨粗鬆症の検診などでよく行われているものです。
超音波法は、台の上にかかとを置いて、超音波をかかとの骨に当て測定する簡単な検査法です。
こちらもMD法同様に、骨粗鬆症の検診などでよく行なわれている方法です。
pQCT法は、専用の小型CT(コンピューター断層撮影)装置で手首など抹消の骨を撮影します。
骨粗鬆症の検診のほかに、骨代謝の異常を来たす病気の精密検査として行われます。
DXA法は、全身の骨の測定が可能で、2種類のエックス線を照射して、太ももの付け根や腰椎の骨密度を測定します。
この方法は、正確な診断に適しているといわれています。
大腿骨頸部を骨折する人の数は、女性を中心に増加の傾向にあります。
2006年版の骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインによると、1987年と2002年の人口1万人あたりの発症率(女性)を比べると、2002年の方が70歳代以降、年代が上がるにつれて発症率が高くなっています。
このようにお年寄りの骨折の発症率が高くなってきているというのは、高齢化が進み、骨折するお年寄りの数が増えているのもそうですが、以前よりもお年寄りが骨折しやすくなっていることを意味します。
骨粗鬆症の増加や運動不足などによる筋力の低下などが、お年寄りが骨折しやすくなった原因といえるようです。
脳梗塞で麻痺が残ったり、パーキンソン病などで体のバランスが悪くなり歩きにくくなるなどの症状が現れると、転倒しやすくなります。
このような病気がお年寄りに増えていることも、骨折の発症率が増加していることに関係があると考えられます。
骨粗鬆症の薬物療法を受けると同時に、運動を取り入れたり、食事に気をつけるなど、普段から転倒しにくい体づくりを行なう事が、骨折を防ぐために大切です。
太ももの付け根を骨折した場合は、入院をして手術を行なう事が多く、入院期間はおよそ1?2ヶ月間です。
手首や腕の付け根などの場合は、骨折部分を三角巾やギブスで固定する治療が行われます。
太ももの付け根の骨折の手術法は、「内固定術」と「人工骨頭置換術」があります。
内固定術は、太ももの付け根の骨の先端からやや離れた部分に骨折が起きた場合に行われる手術法です。
太ももの横を切開して、外側から骨頭へ金属製のネジを入れます。
そのネジを支える金属製の板を骨の横へ当て、小さなネジで骨に固定し、そのまま骨折部分が付くようにします。
人工骨頭置換術は、太ももの付け根の骨の骨頭に近い部分に骨折が起きた場合に行われる手術法です。
この部分は「関節包」と呼ばれる組織に包まれていて、骨は付きにくいという性質があるため、お尻の後ろを切開して、骨頭を取り出し、同じ大きさの人工骨頭に置き換えます。
リハビリテーションは、骨折前と同様の生活を取り戻すために、早期に始める事が重要です。
リハビリテーションは、「骨折した部分の機能回復」と「骨折していない部分の機能維持」の2つにわけられます。
骨折した部分の機能を回復するためのリハビリは、手術後に平行棒や手すりや歩行器などを利用して、骨折した部分に力がかかり過ぎないようにしながら、「立つ」「歩く」「階段の上り下り」などの歩行練習が行なわれます。
歩行訓練の開始時期は、骨折の起こり方によって異なり、骨折が安定していれば、手術後数日以内から行なえます。
しかし、骨が細かく分断している場合などは、開始時期が遅くなります。
骨折していない部分の機能を維持するためには、手術前にベッドの上で、上肢や骨折していない脚を動かすリハビリをします。
お年寄りの場合、服用している薬などの影響で、入院してもすぐに手術を行なえない場合があり、その待機期間中に体を動かさないでいると、筋力が低下したり、関節が固くなったりしてしまいます。
手術後の歩行訓練のときに、しっかりと体を支えられるように、骨折をしていない部分を動かすリハビリが必要なのです。
退院後は、骨粗鬆症の治療を継続し、環境を整えたり、安全に外出する工夫をしたりと、再び骨折をしないようにすることが大切です。
太ももの付け根を骨折したお年寄りが、退院後に反対側を骨折することがよくあるためです。
外出時は、杖を活用すると体のバランスがとりやすくなり、転倒を防げます。
また、靴はかかとが低く、滑り止めがついてるなど、歩きやすいものを選びましょう。
バッグは、リュックにすると両手が自由に動かせるので便利です。
しかし、お年寄りの骨折の多くは、外出先より住み慣れた住宅で起こっています。
必要に応じて、手すりをつける、段差をなくすなど住宅の改修を行ないましょう。
床に散らかったものを片付けたり、電気のコードは部屋の隅に固定するなどして、つまずかないようにする事も必要です。